パネルソーの最も大事で肝腎要なことは、真っ直ぐに直角にカットできること。これにつきます。

したがってパネルソーの調整と言えば、基本的にはカットラインの直線度とカット時の直角度の調整ということになります。
プロの方は「カネを出す」といった言い方もしますね。

また、メジャーの寸法通りのカットになっているかといった0点調整も必要です。

季節による温度変化や湿度変化によってフレームは伸びたり縮んだりして動いています。
金属製のフレームは湿度には影響は受けにくいですが温度の変化には敏感ですし、木製のフレームは温度変化には金属ほどの影響は受けにくいですが湿度の変化には敏感です。

カットライン直線度の調整

カットラインの直線度に関しては、直動ガイドの構造によって調整できるものとできないものがあります。

機械加工によって平面で構成されたガイドを削り出しているものはほぼ調整はできません。

直射日光が意外な影武者

例えば市川(この会社は今は無くなっていますが)のものは直動ガイドが削り出しのタイプです。
厳密に仕上げられていますが、据え付けの時の歪みとか局所的に直射日光が当たっていたとかで狂います。

そうするとなかなか厄介で機械の水平面を取り直すとか局所的な温度変化を避けるとかしないといけません。

いずれにせよ直射日光は大敵です。直射日光が部分的でも全体的にでも当たると、特に金属フレームでは大きく狂って精度が維持できません。
なかなか精度が出ないという方は要チェックです。

窓の近くに機械を設置する場合はカーテンなどで直射日光をカットする必要が出てきます。

それに対して例えば田中式のパネルソー等のように直動ガイドが円筒形のタイプはパイプを僅かに回転させることによって前から見た直線度を補正することができますが、メーカーのサポートにお任せするしかない位に微妙な調整です。

自作パネルソーでは?

自作のパネルソーにおいても上記のメーカー製と同様に直動ガイドのタイプによって調整の方法が違ってきます。

特に自作の場合は直動ガイドの直線度の他に、丸鋸の取り付けの際の刃と直動ガイドとの平行が取れていない場合があります。

また、直線度の調整をする時は使い古した鈍った刃ではなかなかうまくできません。
というのは、鈍った刃だと繊維の方向性に負けて刃が横のベクトルの影響を受けて曲がってしまうからです。

ですので、研ぎ直した刃か新品の刃を使うようにする必要があります。

木の繊維に直角に切断する場合はあまり問題にはなりませんが、繊維に平行に縦切りする場合は年輪の硬軟の影響を受けて曲がる場合があります。

直動ガイドがアルミ押し出し材等を使っている場合は調整の幅はごく僅かですが、丸パイプの場合はある程度の調整ができます。

単管パイプ等のJIS規格では、曲がりの許容誤差は1000mmに対して1mmです。
これは直動ガイドにするにはかなり大きな値と言えます。

パイプの曲がりの判定は、できるだけ長い直定規をパイプに沿わせて隙間を見ます。パイプを回転させると必ず隙間がゼロになり一直線になるところが見つかります。

また、パイプが取り外せる場合は、直線定規に合わせて隙間を測るよりも2本のパイプを合わせてゴロゴロと回転させるとよく分かります。

パイプ二本による直動ガイドでは、全周の遊びをシビアにしたFIX側と左右の遊びをルーズにしたスレーブ側で構成されています。(二本ともシビアにするとまず動きません)

直線度の判定の仕方

ある程度(3×6版の半分くらい)の大きさの板を二枚重ねてカットして折り返して付き合わせます。
直線度が出ていない場合は上下の両端か反対に中程が空いています。


この直線度の調整は直角度の調整の前にやっておく必要があります。
なぜなら直線が出ていないと直角の厳密な判定ができないからです。

なお、日立製の丸ノコでは丸ノコ本体に曲がり修正の機構があるものが多く、ある程度簡便に調整することができます。

直角度の調整

直角度の判定の仕方

直線度の判定の仕方と同様に板を二枚重ねてカットして折り返して付き合わせます。
直角度が出ていなければ上か下のどちらかが開いています。

ピッタリと合わさるまでワーク受け台を上下させて調整します。
簡易的にはワーク受け台の上に大きめの直角定規を置き、定規がカットラインに合うようにワーク受け台を上下させます。

まとめ

定期的な調整が必要です。
精度に大敵の直射日光も要チェックです。

調整項目は

    直線度
    直角度
    メジャー校正

です。

そう言えば余談ですがイギリスは機械の重要な部分を木製にすることがままあります。
例えばスポーツカーのモーガンのシャシーフレームは木製ですし、第二次大戦中の傑作戦闘機のモスキートは金属全盛の時代に木製モノコックでした。さすがに現代のジェット戦闘機には使ってないでしょうが・・・

宮崎駿監督の「紅の豚」の水上機を修理する工房でバーチャンたちがギーコギーコとやってる光景が目に浮かびます。

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